私は現在27歳のフリーランスです。

骨折したのは14歳中学生の時の話です。私は野球部に所属していたため、比較的活発なタイプの中学生でした。昼休みになると、部活のメンバーでワンツーノーバンという遊びをいつもやっていました。ボールがツーバウンドしない間に誰かにパスをして、規定回数ミスをすると罰ゲームという単純な遊びです。そう、忘れもしない秋の地方予選大会決勝戦の3日前に事件が起きました。

いつも通り部活メンバーと楽しく遊んでいると、昼休み中盤になり、だんだんプレーが積極的になってきます。ふいに私の方にボールがフライで飛んできました。私はヘディングで返そうとジャンプすると、少し前にいた友人もヘディングで返そうと後ろ向きでダッシュしてきます。私はボールばかり見ていたため、もうバックしてきている友人に気づかずにヘディングしようとしました。次の瞬間、ボキンと嫌な音が体内で鳴り響き、同時に目の前が一瞬真っ暗になりました。地面に倒れこみ、視界が元に戻ると、頭の方からドドドドドっと土石流が流れてくるような感覚になり、とっさに顔を覆いましたが、茶色のグラウンドに赤い液体がぶわーっと広がりました。おそるおそるぶつかった鼻付近を手でなぞってみると、まっすぐだった鼻がきれいなくの字に曲っているのがすぐにわかりました。3日後の決勝戦にもう出られないと一瞬で悟りました。

一緒に遊んでいたメンバーが慌てて近寄ってきて、保健室に連れていかれました。保健室に到着したころ、アドレナリンの効果が薄まってきたのか、今まで味わったことのない激痛と吐き気が襲ってきました。後で聞いた話ですが、鼻は脳に近いため、骨折すると平衡感覚がなくなり、目が回った状態になるとのことでした。痛みと吐き気で意識がもうろうとなる中、病院に行き、まずは診察です。鼻が折れているのに結構医者に触られてふざけんなと思ったのを今でも鮮明に覚えています。重度の場合や、変な風に曲がってしまった場合は、鼻の穴に金属の棒を入れ、バコっと元の位置に戻すらしいですが、私はそんなに重度ではなかったためか、顔を固定することぐらいしかしませんでした。あとは絶対安静で骨がつながるのを待つしかないそうです。1週間は起きているだけでめまいや吐き気がしてとてもつらく、決勝戦の応援はもちろん学校にすら行けない状態でした。その後1ヶ月近くも学校には行かずに安静にしていました。そんな頻繁に病院には行かず、ただじっとしてるだけという毎日がとてもつらかったのを覚えています。完治するまでの通院は2.3回ほどでレントゲンを撮って終わりぐらいでした。病院の治療費などは親がすべてをやっていたため、あまりよくわかりませんが、ぶつかってきた友人とはしばらく気まずい関係が続いてしまいました。

1ヶ月とちょっと経ったくらいには学校に行けるぐらいまでに回復し、鼻にギプスをはめての登校でした。クラスではまあまあ目立つ方だったため、鼻ギプスのことは結構いじられましたが、何もすることのない毎日に比べると、みんなと話したり関わったりすることに喜びを感じました。ちなみに私が抜けた後でも決勝戦に見事勝利し、県大会に出場しました。県大会はちょうど治ったばかりぐらいのタイミングでした。私はピッチャーだったため、体の上下動が結構あり、いつもよりは頭がクラクラしましたが、鼻ギプスをしながら出場することが出来ました。

その後は、ヘディングしてきた友人ともギクシャクは解消できましたし、心なしか以前よりも鼻が高くなった気がします。骨が曲がってしまったまま、つながってしまうこともあるらしいのですが、私の場合はちょっと高くなったのでラッキーでした。また、日常の当たり前にすることがこんなにも喜べることなんだということに気づくこともできました。
金銭面はわかりませんが、なんだかんだでいい経験をしたと今は思っています。