私が胸について悩みはじめたのは、人よりちょっと遅いであろう高校一年生のときでした。十六歳です。それまで地味で真面目な生徒で過ごしてきて、恋愛のレの字も縁のなかった私にとって、胸について考えるようなきっかけはありませんでした。ところが、高校に入学し、たまたま出席番号で前の席になった女の子がなんとFカップ。急に自分の小さな胸が貧相に思えて、気になってきたのです。恥ずかしい話なのですが、当時私はあまりにも胸が小さいのでブラをしていませんでした。むしろ、する必要がないくらいだったので、肩もこるブラなんてしたくありませんでした。胸について言えば、乳首は大きく、黒く、いいところなしだったのに。
胸について気にし始めた頃、Fカップの友人と、もう一人の友人とで三人の組みになり、体育のストレッチをすることがありました。例によって、私はブラをつけておらず、友人の背中の上で反り返るストレッチをしているとき、ふいに友人に胸を触られビクッとしました。触った友人はひと言、「本当にないね」と。ショックでした。弁解をすると、ブラをしないせいで、胸が横に流れ、平になっていた部分を触られたのです。もとからないのに、それじゃ余計にないと思われたに違いありません。恥ずかしかったです。まさか、胸を触られることがあるとは思ってもいなかったので、不意をつかれました。Fカップの友人は「男なの?」と笑っていて、それにもまた傷つきました。
この件が決定的となって、私は胸に対して真剣に向き合うことにしました。まず、乳首が大きいのはどうしようもないので、せめて色を薄くしようとネット検索。するとそういった商品が出てきたのです。とはいえ、当時高校生だった私には高額で買えず、大学生になってアルバイトを始めてから、お手入れを開始しました。ちなみに、それまでは誰ともお付き合いに発展せずにきたので、見せる機会はなかったのですが。効果は少しずつ効果が表れてきました。期待していたほどではありませんでしたが、徐々に黒かった乳首が茶色くらいには変化。しかし、長年ほうっておいたせいで出来た離れ胸の形は、なかなか治らず・・・。矯正下着を買うほどのお金はありませんし、何とかブラで寄せてあげてを繰り返すしかありませんでした。横に流れた胸の肉が蓄積して、アンダーのサイズのでかいことでかいこと。それを治そうとダイエットすれば胸自体の肉が減ってしまうし、どうしたらいいんだ・・・と、これまで胸に構わなかった分を取り戻すかのように、私には課題が山積みでした。背中から肉を持ってきて、あげる作業を繰り返しました。
結果的に、私は大きい胸が好きな男性とも、小さい胸が好きな男性ともお付き合いをしました。別に私の胸が大きくなったわけではありません。でも、小さいがゆえに、たるんでいなかったようで、そこで評価してもらったようです。おっぱいは好きだけど、形も大事というのがお付き合いした男性の総意でした。いや、そう言ってくれていただけかもしれませんけど。また、私は小さい胸の代わりに、わきがや体臭などがあまりなく、匂いは褒めてもらったことがあります。正体はボディクリームですが、匂いは大事のようです。
このように十代の頃や男性とお付き合いしているときはおっぱいについてアレコレ悩みましたが、結婚し、妊娠したいまは驚異的に胸が大きくなったので、あまり気にする必要はなかったんだなと思っています。大きくなるときは、勝手になるんだなと。得した気分です。ただせっかく頑張って薄くした乳首の色は、妊娠したら真っ黒になってしまいました。戻るといいのですが。いま心配なのは、垂れです。まさか、自分の人生で垂れを気にすることがあるなんて思いませんでした。